かんたん東洋医学入門

 

第1回 基本の脈診その1

 鍼灸治療院に言った事のある人なら普通、皆知っていると思いますが、東洋医学(鍼灸・漢方)では患者さんの病の原因、状態を見極める時に色々と独特な方法使いますが脈や舌、時にお腹の状態を参考にすることは皆、御存知だと思います。今回は脈(脈診)について基本的なことをかんたんに書こうと思います。  まず第一に東洋医学の脈診は血圧をみている訳ではありません。勿論、脈に触れ、その緊張の度合い、緊張の性質は観察します。基本中の基本の脈とされるのが、浮と沈数と遅、それから緊と弦滑と渋です。 浮と沈は想像がつくと思いますが、簡単に言うと触れて簡単に脈を感じられるのが浮、沈は軽く按じるだけでは取れない脈です。浮は病がまだ表面にある状態、沈は裏まで進んでいる状態を指します。 数(さく)は早い脈、遅は遅い脈ですが、数脈は熱症、遅脈は寒症です熱症、寒症の寒、熱は現代化学の熱や寒とは別で(共通するところも有りますが)東洋医学の病を表す概念の側面が強いです。 緊脈は非常に緊張した張り詰めた脈、寒や激痛の症状を表します。弦は緊ほど緊張はしていなく琴の弦のような弾力があるもので肝臓、痰飲、漢方では水滞などの病状が疑われます。この場合の肝臓、痰も西洋医学のものとは必ずしも同じでは有りません。 滑脈はなめらかな脈で痰飲、食滞、熱症を示唆します。渋はなめらかでなく、ナイフで竹を切る時のような感触を思わせる脈で気血の流れが上手くいかなくなている状態を示唆します。 これらの脈を基本中の基本とし脈の種類は増え、また脈を取る場所でも色々方法が有り諸説となえとなえられていますが、ある程度からは流派、個人でどんどん飛躍しSFの世界に近い状態になるのが脈診です(苦笑)。ですが基本の脈診は臨床の上では非常に重要なものになります。ちなみに東洋医学では目、耳、肌、臭い、挙動、爪などなど色々なものを病状の判断の材料にします

 

基本の脈診その2


脈とともに必ず診るのが舌です。したは大きく分け色、形状、液体の含んでいる量、苔の状態、舌の動きです。
代表的なものはまず下の色では、解りやすく言いますと血色の無い舌、紫色の舌、赤が強い舌です。血色が悪い舌は淡舌と言い血(東洋医学での「血」で西洋医学とは異なるところもあります)の生成に問題が有ったり、身体を温める機能に問題があったり、エネルギー(気)が足りない場合などを示唆します。

紫の色は色々バリエーションごとに違うのですが、基本的に血や気の流れが滞っている病態が根本にあることを示唆します。

紅みの強い舌は熱の病態を示唆します。

次に舌の形状についてですが代表的なものに太って大きいもの、やせて薄いもの、表面に亀裂ののあるもの、縁に歯の痕がつきヒレヒレ状のもの、小さな棘の様なものがあるものなどが有ります。

太って多きいものは色が薄めでは温める機能とエネルギーの落ちた状態を示唆し、色が赤めの場合は東洋医学での火の病態が有ることを示唆します。

痩せた形状のものはバリエーションは幾つか有りますが、基本的に東洋医学でいう虚の状態で、エネルギーが落ちている、働きが落ちている、働かなくなっている状態です。

亀裂の有るものは陰液、身体の深部の重要な水分に問題が有る場合や血に問題が有ることを示唆します。

歯の痕がついているものは東洋医学の脾臓、現代的にいいますとお腹系の機能に問題がありエネルギー不足などを示唆します。

小さな棘が有るものは熱の病態が進んでいるもので、場所により病態のある臓器を表します。

若干東洋医学用語を強引に表現したところはあります。次回に続く。

 

基本の舌診

舌診 基本の舌診その1


 脈とともに必ず診るのが舌です。舌は大きく分けて、色、形状と厚さ、液体の含んでいる量、苔の状態、舌の動きです。
代表的なものはまず舌の色では、解りやすく言いますと血色の無い舌、紫色の舌、赤が強い舌です。

血色が悪い舌は淡舌と言い、血(東洋医学での「血」で西洋医学とは異なるところもあります)の生成に問題が有ったり、身体を温める機能に問題があったり、エネルギー(気)が足りない場合などを示唆します。

紫色系の舌は色々バリエーションごとに違うのですが、基本的に血や気の流れが滞っている欝滞している病態が根本にあることを示唆します。

紅みの強い舌は熱の病態を示唆します。

次に舌の形状についてですが代表的なものに太って大きいもの、やせて薄いもの、表面に亀裂ののあるもの、縁に歯の痕がつきヒレヒレ状のもの、小さな棘の様なものがあるものなどが有ります。

太って多きいものは色が薄めでは温める機能とエネルギーの落ちた状態を示唆し、色が赤めの場合は東洋医学での火の病態が有ることを示唆します。

痩せた形状のものはバリエーションは幾つか有りますが、基本的に東洋医学でいう虚の状態で、エネルギーが落ちている、働きが落ちている、働かなくなっている状態です。

亀裂の有るものは陰液、身体の深部の重要な水分に問題が有る場合や血に問題が有ることを示唆します。

歯の痕がついているものは東洋医学の脾臓、現代的にいいますとお腹系の機能に問題がありエネルギー不足などを示唆します。

小さな棘が有るものは熱の病態が進んでいるもので、場所により病態のある臓器を表します。


東洋医学用語を現代の言葉で短く強引に表現したところがあります、正確には治療院にて直接御質問下さい。


基本の舌診その2


東洋医学での舌診で舌にある苔は大きな判断材料になります。

健康な理想的な苔は薄く白い、軽く湿った苔です。苔は主に脾と胃に大きく関わると考えています。

 苔の色は白・黄色・灰色・黒にわけられます。白色の苔は舌自体の色が良好であれば普通は健康な状態と判断します。舌の色が薄かったりすると寒邪が深い場所まできていることを考えます。その他、主に寒邪と病態が関わることを意識します。 黄色の場合は熱邪の病態が絡んでいることを考えます。黒色の苔は寒邪、熱邪のどちらでも重症になると見られることが多く、灰色はその途中経過である場合が多いです。

 次に苔の状態についてですが、主に苔の厚さ、潤いの度合い、それ以外にねっとりとした膩苔と呼ばれるもの、苔が部分的あるいは全て剥離しているもの、苔が浮いている様な状態のものなどが有ります。 厚さは病状が有る場合、厚いほど病状が進み深く進んでいると考えます。また厚いものが薄くなってくると、病状がよくなっていると考えます。

 潤いは健康な場合、軽く潤い、潤いが強いと病態に対する湿邪の関わり、乾燥している場合、体液(津液)の流れの問題や、熱の病態を考えます。 ねっとりとした苔を膩苔と呼び、東洋医学で言う食積・痰濁の病態を考えます。

 苔が部分的或いは全て剥離している場合は気を失っている、造れていない虚弱な状態を表しています。この様に舌の苔に異常がある人は東洋医学では立派な病態の現われとされます。

 苔が厚い場合、多くの場合臭いを放ちますので、ブラシでこすられる人がいますが、一時的に取れても病態が続く限り時間の経過と共に戻ります。逆をいいますと病態が治れば苔は白く底が薄っすら透けて見える位の健康な舌と舌苔になります。舌苔に問題を感じている方は是非、東洋医学の治療を受けることをお勧めします。

基本の舌診その3

最後は舌の動きになります。舌が強直しスムーズに動かない場合、東洋医学では熱による病態で津液(東洋医学での身体の体液)に病が及んでいる場合や、中風、現代の脳卒中の徴候とされます。また舌を出した時、左右片側にゆがむものも脳卒中の前兆とされます。  舌が軟弱でうまく動かせない(動かせていない)場合、慢性的病状で気血両虚の状態、エネルギーの生産、輸送などが大きくダウンしている状態であることが多いです。また津液に病が及んでいる場合も考えられます。  舌が震えているものは気血両虚あるいは陽気(身体の動の性質のエネルギー)が弱っている、または感染症などを考えます。  舌が縮まり外に上手く出せないものは東洋医学での色々な病態が重篤な状態になっている場合にみられます。  

実生活で一般の方が気にすべきは、やはり舌の動作、ろれつが回らないことでしょう。高齢者と同居している方は定期的に高齢者の舌の動きをチェックすることは脳卒中の早めの対処につながることもあり、死や重度の後遺症を防ぐのに役立ちます。

 

五臓論

五臓論其の1

東洋医学では身体の生理機能、精神活動は五つの臓器(肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓)と密接に関わっていると考えています。そして5つの臓器は互いにバランスを取り合い影響しあっていると考えています。何か病態が表れると五つの内のどの臓に失調が起こり、五つの臓腑が互いに取り合っているバランスをどのように崩しているか探ります。

この理論は中国の古代の哲学である陰陽五行説に当てはめ考えます。東洋医学は古代哲学の影響下に始まっています。臨床で必ずしも、この理論が当てはまるわけでは無いのですが、予想外に当てはまり驚くこともあります。

 

五臓論其の2
今回は具体的にそれぞれの臓の働きの話をしましょう。まずは腎臓の働きについてお話します。東洋医学では腎臓は精気をしまっておく場所になります。精気には先天精と後天の精が有り、先天の精とは生まれるとき両親から受け継いだ精気のことです。後天の精とは呼吸と飲食から得られる気のこで、これらの精気を大事に貯蔵しておくのが腎臓になります。 精気を上手くしまっておけなくなると、成長・発育、生殖に影響が現れます。ですので成長・発育、生殖は腎臓と深く関わっています。また毛髪、歯、耳の症状の時も腎臓が原因の場合が有ります。その他に腎臓は身体の温順機能との関わりや、肺により吸入した呼気を深く取り込む仕事、津液(水分)の貯留・分布・排泄と深く関わりがあります。 水分の貯留・分布・排泄と東洋医学の解剖学の情報の類似から杉田玄白が「解体新書」を訳し作る時、「これは腎臓のことだな」と考え、今の西洋医学の腎臓の名が有ると思われます。因みに臓にはそれぞれ、表裏の関係にある腑というものが有ります。腎臓は膀胱、肝臓は胆、脾臓は胃、心臓は小腸、肺は大腸と表裏の関係にあります。

 

五臓論其の3

肝臓について

 東洋医学では肝は疏泄を主ると言われています。疏泄作用とは淀みなく、隅々まで気血をゆきわたらせる作用のことです。肝の失調が起こると気血の鬱滞が起こり、女性などでは生理不順、月経痛などが起こったり、肝の経絡の通る胸の脇あたりに張痛が起こったりします。また精神に対してはイライラしやすかったり、逆に抑鬱状態になることも有ります。東洋医学ではこれらを気機の鬱滞、流れが上手くいかなくなることにより起こると考えています。また肝は蔵血を主るとされ、蔵血が上手く出来なくなると生理に異常が現れたり、筋肉に異常が現れたりします。肝は筋、目、涙、爪と関りが深い臓とされ、それらの異常は肝の失調が原因であることが多いです。また東洋医学では身体と精神は密接に関わっているとされ、肝臓に対しては、特に怒の感情が関わっていると考えています。怒の感情は肝を傷りやすく、また肝の不調は気、精神の鬱滞を招き、イライラしやすくさせます。また肝の不調が胃腸(脾臓・胃腑)に影響を与えることも有ります。このようなことから肝臓の不調は現代のストレス社会と非常に深い関係の有る臓器と言えます。

 

五臓論其の4

 東洋医学では脾臓は、ものすご~くおおざっぱに言うとお腹系でしょうか?脾臓と胃は表裏の関係にあります(東洋医学での胃は西洋の胃とほぼ同じです)。その他、脾臓は「運化、昇清、統血を主る」と言われ、昇清とは消化した飲食物や気などのを上へと上げる作用で、胃の降濁作用と対を成す機能です。脾の昇清作用が失調すると水穀(飲食物)から得られた気を上に昇らせ、肺や心(臓)により全身に巡らす事が出来きないなど、ものの上昇の不調が起こり、疲労、脱力感、精神疲労、眩暈、腹張、脱腸、内臓下垂、下痢などの症状を起こしたりします。統血とは脈外に血がもれることを防ぐ作用で血便、血尿、不正性器出血などの症状や血の止まりにくい体質、打ち身によりアザが出来やすい体質などが統血機能の不調で現れます。また鍼灸治療では血の病症の時に使う常用穴(ツボ)である三陰交や血海が脾臓の経絡に属するため、血の病症の時はまず脾臓を念頭に置きます。 そのほか口の中に起こる病症(味覚障害、唾液の異常など)や唇の状態も関わると考えています。また脾臓は東洋医学で言う湿邪と関りが強いとされ、常用穴の関係などもり、湿度、気候・気圧、季節の変化などにより体調を崩す治療の時は脾臓を想定することが多いです。その他、四肢の肌肉、「思」という精神活動などが脾臓と関わっていると考えています。

五臓論その五

東洋医学での肺

東洋医学での肺は、気を主り、呼吸、身体の水分の調整、免疫力などと関係があり、鼻と関りが有ります。脾臓で飲食物から得られたもの(精微)と肺で吸引されたもの(清気)が肺で結合し身体の原動力ともいえる気(宗気)を作ります。そしてその気を全身に巡らせます。水分も気とともに巡らせ、。膀胱へと送られます。東洋医学では免疫力は肺の主るものと考え肺の機能に不調が出ると、感染症に罹りやすくなると考えています。体表面から菌、ウィルスの侵入させないようにするコントロールが出来なくなるという発想なのですが、表面のコント―ロールという事で、汗のコントロールも肺の仕事と考え、基本的に皮毛は肺により滋養されている器官という考えがります。また鼻や鼻の機能、鼻水と関わる症状は肺と深い関りがあると考えており、基本的に身体の水分に関する症状の原因を探すとき、肺は重要な臓器になります。水分は脾臓で会得し→肺で全身に送られ→最終的に腎に送られ腎の気化作用により外へ排出されます。 また腎の助けにより肺は呼吸を深く吸い込むことが出来きると考えており、腎の不調が起こると上手く肺で気を得られなくなります。東洋医学では臓腑それぞれが助け合い支えあっていると考えていますが、肺にとって腎は大事な臓器とも言えます。例えば喘息の場合、肺と共に腎臓の不調もまず考えます。また「憂」と「悲」という感情が過度になると影響が出やすい臓は肺になります。また長時間、横になっている、長時間睡眠も肺に悪影響を与えると考えています。

東洋医学の病の診方:虚と実

東洋医学の病状のみかたの特徴的なものの一つに、病状を虚症か実症かの判断があります。 虚症とは気血や精気などの消失や補給が出来ず不足、足りなくなっている状態、弱っている状態です。これに対し実は気血、精気などが満ちた状態をさしますが、邪気(病邪)が満ちた状態、病状に勢いのある状態を実症と言ったりもします。また感染症の初期の様に体が外邪に対し強く抵抗し戦っている状態を指す時も有ります、実は良い意味と悪い意味両方で使います。そして治療をするさいに虚症の場合は補法という治療法で治療し、実症の場合はシャ法で治療するという大原則が有り、虚証のシャ法をしたり、実症に補法をすると悪化します。これは漢方薬治療では顕著に悪化します。「漢方薬は副作用は無い優しい薬」と思われている方も多いですが、副作用もあれば虚実の判断をミスれば悪化もします。治療者に私は虚症ですか?実証ですか?と聞いて答えられない場合、その治療者は東洋医学の知識は基本的に無いと言えます。ただ虚実は同じ病気の中で進行する過程や治る過程で移り変わります(変わらない時も有ります)。聞くたんびに虚実が変わっても信用できない治療者というわけではありません

 

東洋医学の病のみかた:天人合一思想

怪しい宗教ではありません(笑)。東洋医学では天人合一思想という古代中国の哲学を基本理論の一つとしてもっていまして、自然界を大宇宙、人体を小宇宙と考えており、自然の法則は人体にも通じると考えています。例えばよく更年期障害の人は頭が熱くなり、足は冷たくなったりしますが自然界でも熱はは上に上昇し、冷気は下にたまります。水は流れがあれば腐りませんが、流れがないと菌などが繁殖します。栄養度の高ぎる湖が必ずしも全ての生物に都合が良いわけでは無いのと同じで、人体も行き過ぎた栄養は害となることも有ります。そのように自然の法則は人体、人体に起こる病状にも通じると古代の人は考えました。

東洋医学用語を現代の言葉で短く強引に表現したところがあります、正確には治療院にて直接御質問下さい。